たとえば知人の方などから「急に尿が出なくなり透析もしたが、やがて尿が出るようになり、透析が必要なくなった」という話を聞かれたことがあるかもしれません。腎機能が回復して、透析が必要なくなることを「透析から離脱する」といいます。
しかし、離脱があり得る急性腎機能障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)は、元の病気となるものが違うのです。残念ですが、いったんCKD(慢性腎臓病)となると、腎臓の働きが元に戻ることはありません。
腎不全となり腎臓の働きが悪くなった場合、腎臓の働きの一部を代替的に行う方法として、血液透析・腹膜透析があり、これらを透析療法といいます。
血液透析とは血液を体外へ送り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を使って血液中の老廃物や塩分・水分を取り除き、血液をきれいにする治療法です。
また、腹膜透析は、体内の腹腔(腹部の臓器をおおっている腹膜の囲まれた空間)に透析液を出し入れして、血液中の老廃物や、塩分、水分を取り除き、血液をきれいにする治療法です。
血液透析は週3回、1回の治療に4時間~5時間が一般的です。
腹膜透析は自宅でご自分で行う治療になりますので、月に1~2回の通院で済みます。
なお、通院スケジュールの例は「透析患者さまの週間スケジュール例」にサンプルがございます。
慢性腎臓病(CKD=Chronic Kidney Disease)は、適切な治療を受けないままでいると腎不全になるだけではなく、心筋梗塞や心不全、脳卒中のリスクが約3倍も高くなるとされています。
なお、CKDの診断基準は、
①尿蛋白が1日1.5g以上で、かつ超音波検査、血液検査、病理で明らかに腎臓に異常がみられる
②腎臓の働き(糸球体ろ過量=GFR)が、健常な人の60%以下に低下
①②のいずれか、または両方が3か月以上続くとCKDと診断されます。
CKDの進行度に応じた、適切な治療法・管理法を行うことが重要です。
「あまりひどい尿毒症の症状もないのに、透析になってしまった」
「透析をはじめたことによって、自分の腎臓の働き(残腎機能)が低下してしまう」
といった気持ちをもたれる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、主治医は個々の患者さまのさまざまな病状から、もっとも適切な透析導入の時期を判断します。
透析をすすめるときは、
(1)このままでは尿毒症症状が進み、最悪の結果を招く恐れがある
(2)透析をすることで症状の改善が得られる可能性がある
(3)患者さまが透析に耐えることが出来るとき
のみです。
糖尿病性腎症などは尿素窒素、クレアチニンなどの尿毒素の値があまり高くなくても肺水腫などを起こし、透析の開始が遅れたために生命の危機を招く場合があります。また透析開始が遅れたために、つぎつぎ余病をおこしてしまい、社会復帰が大幅に遅れる可能性もあります。
一般的にいうと、元の病気が糖尿病性腎症や腎硬化症の方、お年をとられている方では、他の腎炎などの方や若い方にくらべて早く透析をうけていただくことになります。